2026年2月6日
矯正治療を検討している方や、お子さんの「いつもお口がポカン」が気になっている方の中には、MFT(口腔筋機能療法)という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
MFTは舌や口周りの筋肉を正しく使えるようにするトレーニングですが、歯並びや噛み合わせ、呼吸のしかたなどに深く関わる、大切な土台づくりともいえます。
「本当に必要なの?」「やらなくても大丈夫では?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
結論から言うと、MFTを行わないことで様々な問題が生じる可能性があります。この記事では、MFTをやらないとどうなるのかを詳しく解説するとともに、MFTの効果やトレーニング方法についてもご紹介します。

まず、MFTとは何かについて理解しておきましょう。
MFTとは「Myofunctional Therapy」の略称で、日本語では「口腔筋機能療法」と呼ばれています。簡単に言えば「お口の筋トレ」のようなもので、舌や唇、頬など口周りの筋肉を正しく使えるようにするためのトレーニング方法です。
私たちは普段、食べ物を噛んだり、飲み込んだり、話したりするときに口周りの筋肉を使っています。しかし、舌の位置が正しくなかったり、口呼吸が習慣化していたりすると、筋肉のバランスが崩れ、様々な問題を引き起こす原因となります。
MFTはこうした問題を改善するために、舌の正しい位置を覚えさせ、口周りの筋肉を適切に機能させることを目的としています。
歯並びや噛み合わせは、骨格や遺伝的要因だけでなく、舌の位置や口周りの筋肉の使い方によっても大きく影響を受けます。舌は約200グラムもの重さがあり、1日に約2000回も唾液を飲み込む動作をしています。舌癖がある場合、この動作のたびに歯を押してしまうため、歯並びが乱れる原因になるのです。
矯正治療で歯並びを整えても、舌癖が残っていれば元の歯並びに戻ってしまう「後戻り」のリスクが高まります。MFTは、こうした根本的な原因を改善するために必要とされている治療法です。

MFTを行わない場合、具体的にどのような問題が生じるのか説明していきます。
MFTを行わずに舌癖を放置していると、歯並びや噛み合わせが悪化していく可能性があります。
舌が正しい位置にない場合、常に歯を押し続けることになります。たとえば、舌を前歯に押し当てる癖がある人は、前歯が前方に押し出されて出っ歯になりやすくなります。また、舌が下がった位置にあると、上顎の発育が妨げられ、歯が並ぶスペースが不足してガタガタの歯並びになることもあります。
さらに、上下の前歯が噛み合わない「開咬」や、下顎が前に出る「受け口」なども、舌癖が原因で生じることがあります。
せっかく矯正治療を行っても、MFTを併用しないと治療効果が得られにくくなる場合があります。
矯正装置は歯に少しずつ力を加えて移動させていきますが、舌癖があると舌の力が矯正の妨げになってしまいます。その結果、治療期間が長引いたり、思うように歯が動かなかったりします。
また、矯正治療後に装置を外した段階で舌癖が残っていると、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまう「後戻り」のリスクが非常に高くなります。後戻りが起きると、再度矯正治療が必要になるケースもあるため、MFTの重要性は非常に高いといえるでしょう。
舌が正しい位置にないと、口が自然と開きやすくなり、口呼吸が習慣化してしまいます。
正しい舌の位置は、舌全体が上顎にぴったりとついている状態です。舌がこの位置にあると、自然と口が閉じ、鼻呼吸ができます。しかし、舌が下がった位置にあると口が開きやすくなり、「お口ポカン」の状態が続いてしまうのです。
口呼吸は単なる見た目の問題だけでなく、様々な健康上のリスクを伴います。口から直接空気を吸い込むため、ウイルスや細菌が体内に入りやすくなり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなることもあります。また、口の中が乾燥するため、虫歯や歯周病、口臭のリスクも高まります。
舌の位置異常や癖があると、発音にも影響が出る場合があります。
私たちが言葉を発するとき、舌は複雑な動きをしています。舌が正しく機能していないと、空気が漏れたり、舌足らずな発音になったりします。特に「サ行」「タ行」「ラ行」の発音に影響が出やすいとされています。
子どもの場合、発音の問題が学校生活でのコミュニケーションに影響することもあるため、早めの対処が望ましいでしょう。
MFTを行わず口周りの筋肉のバランスが崩れたままでいると、顎関節や顔全体のバランスにも影響を及ぼす可能性があります。
舌癖や口呼吸が続くと、顎の発育に偏りが生じ、顔が面長になったり、顎関節症のリスクが高まったりする可能性も高いです。また、口呼吸が習慣化すると、猫背になりやすく、姿勢全体に悪影響を及ぼすこともあります。
口呼吸が習慣化すると、睡眠中にいびきをかきやすくなり、睡眠の質が低下する恐れがあります。
さらに深刻なケースでは、睡眠時無呼吸症候群のリスクも高まります。睡眠の質が低下すると、日中の集中力低下や疲労感、子どもの場合は成長への影響も懸念されるでしょう。

MFTは、以下のような症状や癖がある方に特に必要とされています。
普段から舌が前歯に当たっている、飲み込むときに舌を前に突き出す癖がある方は、MFTが必要です。鏡の前で唾を飲み込んでみて、舌が見えたり、歯に当たったりする場合は要注意です。
気がつくと口が開いている、いつも口で呼吸している、唇が乾燥しやすいなどの症状がある方は、MFTで改善が期待できます。大人の方でも、長年の口呼吸が習慣化している場合はトレーニングが有効です。
子どもに多い指しゃぶりや爪噛みの癖は、歯並びに悪影響を与えます。癖をやめた後も、口周りの筋肉のバランスを整えるためにMFTが推奨されることがあります。
矯正治療の効果を最大限に発揮し、後戻りを防ぐために、MFTは非常に重要です。矯正治療を検討している方、現在治療中の方は、担当の歯科医師にMFTについて相談してみることをおすすめします。

MFTでは、様々なトレーニングを通じて口周りの筋肉を鍛えていきます。代表的なトレーニング方法をご紹介しましょう。
舌の正しい位置を覚えるための基本的なトレーニングです。上顎の前歯の付け根から少し後ろにある「スポット」と呼ばれる位置に舌先を当て、舌全体を上顎にぴったりとつける練習をします。
最初は意識しないと維持できませんが、繰り返し練習することで無意識でもこの位置を保てるようになります。
舌を上顎に吸い付けてから「ポン」と音を鳴らすトレーニングです。舌の筋力を鍛えるとともに、舌を上顎につける感覚を身につけることができます。
唇の筋力を鍛えるトレーニングです。ボタンに糸を通し、唇と歯の間にボタンを挟んで、糸を引っ張っても唇からボタンが外れないように力を入れて抵抗します。口を閉じる力を強化することで、自然と口を閉じていられるようになります。

MFTの効果や、どれくらいの期間が必要なのかについても触れておきましょう。
MFTを継続して行うことで、舌の正しい位置の習得、口呼吸から鼻呼吸への改善、発音の改善、矯正治療の効果向上と後戻り防止、顎関節への負担軽減、睡眠の質向上といった効果が期待できます。
特に矯正治療と併用することで、治療がスムーズに進み、治療後の安定性も高まるとされています。
MFTの期間は個人差がありますが、一般的には1年から2年程度の継続が必要とされています。月に1回程度の通院でトレーニングの進捗を確認し、自宅で毎日トレーニングを続けることが重要です。
最初の数ヶ月で基本的なトレーニングを習得し、その後は日常生活の中で無意識に正しい舌の位置を維持できるようになることを目指します。
MFTは子どもだけでなく、大人にも効果があります。子どもの頃から長年続いてきた癖を改善するには時間がかかることもありますが、根気強くトレーニングを続けることで改善は可能です。
特に矯正治療を受ける大人の方は、後戻りを防ぐためにもMFTを併用することが推奨されています。

MFTにはメリットだけでなく、デメリットもあることを理解しておきましょう。
MFTの最大のメリットは、歯並びや噛み合わせの根本的な原因にアプローチできることです。矯正治療だけでは改善できない舌癖や口呼吸を改善することで、治療効果を高め、後戻りを防ぐことができます。
また、口呼吸が改善されることで、風邪をひきにくくなったり、口臭が軽減されたりといった全身の健康面でのメリットも期待できます。
一方で、MFTには即効性がないというデメリットがあります。効果を実感するまでには数か月から1年以上かかることもあり、根気強く続ける必要があるでしょう。
また、自宅での毎日のトレーニングが欠かせないため、モチベーションの維持が難しいと感じる方もいます。費用面でも、自費診療となることが多く、費用負担が生じる点も考慮しておく必要があります。
MFTを行わず舌癖や口呼吸を放置していると、歯並びや噛み合わせの悪化、矯正治療の効果低下と後戻り、発音の問題、顎関節や顔のバランスへの影響、睡眠の質低下といった様々な問題が生じる可能性があります。
特に矯正治療を受ける方にとって、MFTは治療効果を最大限に発揮し、後戻りを防ぐために非常に重要なトレーニングといえます。
MFTには即効性がなく、継続的な努力が必要ですが、口腔の健康だけでなく全身の健康にも良い影響をもたらします。「お口ポカン」や舌癖が気になる方、矯正治療を検討している方は、ぜひ歯科医院でMFTについて相談してみてください。
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